古典芸能にもマーケティングが必要な時代!?

中小企業診断士 gunさん

~ 「古典芸能」の技能承継・普及に挑む中小企業診断士の挑戦 ~

中小企業診断士試験R3年度合格者を紹介する本企画。

第3段はgunさんにインタビューさせていただきました。芸術・文化関連の財団職員として古典芸能関連の施設の責任者を務めるgunさん。変化が生じにくい世界に経営の視点を加え、古典芸能の技術伝承・普及のために敢えて変革に挑戦されています。

戦略論、組織論、モチベーション理論、マーケティング等、診断士試験の知識をフル活用して邁進するgunさん。その挑戦の日々について語っていただきました。

中小企業診断士 gunさん

名前:gun(グン)

企業内診断士(芸術・文化関連の財団職員)

受験歴

  • 1次3回
  • 2次1回

趣味:美術館巡り、舞台鑑賞、仏像鑑賞

インタビュアー:ぼっち

Twitter:@GhyFQJILFp6JuNI
中小企業診断士を取得しブラック企業から脱出したおっさん。ふそろい15執筆メンバー。 【保有】中小企業診断士(城南支部所属)、宅建、簿記2級、TOEIC840 youtube始めました↓
診断士-BizWatch

診断士試験との出会い

これまでどういったキャリアを過ごしてこられたのでしょうか?

大学時代は体育会系のダンス部に所属していました。最近話題に上がることが多くなった、所謂コンテンポラリーダンスです。社会人になったらダンスの公演(制作)がやりたいと考えていたので、民間企業で働いたあと、芸術・文化関連の財団に入り、舞台の企画や演劇のワークショップ等を開催する複数の部署に育休期間なども含めて合計16年程所属しました。

その後本部の経理に異動し、経営企画で経理業務に13年程従事しました。公演やイベントを数値で評価する視点も必要になり、FP2級や簿記2級の資格も取得しました。中小企業診断士の勉強を始めたのも経理時代でした。

今年の4月からは「古典芸能」の公演を行う施設の責任者として再び現場に戻っています。

中小企業診断士を目指した理由は?

経理時代のある出来事がきっかけでした。

自社のメンバーと外部の中小企業診断士でディスカッションする機会があったのですが、全く議論がかみ合わなかったのです。診断士の先生は経営の観点からコメントしていたのですが、自社のメンバーは「公益法人はそういう考え方じゃない」「芸術の特殊性を理解していない」と議論が平行線でした。

その時に、「果たして診断士の先生方が言っていることは間違っているのだろうか?公益法人のあるべき姿というのはどういうものなのか、経営の視点も持った上で考えてみたい!」と思ったのが勉強を始めたきっかけです。

合格後の変化について

見事試験に合格されたわけですが、前述の疑問は晴れましたか?

まだまだ道半ばで答えは出ていません。

でも、自社のメンバーと診断士の先生どちらの言っていたことも完全に間違いというわけではないのだろうと今は考えています。展覧会や公演をする際に、採算を確保して興行として成功させることも重要ですし、それとはまた別の話で普及や次世代育成といった観点も重要なのだと思います。

診断士試験の勉強は実務に活きていますか?

はい、実はこの4月から「古典芸能」の公演を行う施設で責任者を任されています。正に採算の確保と普及の両立について考える必要が出ており、診断士の知識もフル活用しています。

まず大きな観点で、「古典芸能」についてしっかりとマーケティングの観点で考える必要があると考え色々と取り組んでいる所です。

伝統芸能 × マーケティング

古典芸能のマーケティングって、診断士としては響きだけでワクワクしますね(笑) 古典芸能の現在のターゲットや、抱えている課題は何だと思いますか?

はい、ワクワクしますよね(笑)

まず現在のターゲットですが、60代以上の方になります。経営の観点から大きく分けて3つ課題があると考えています。

  1. 40代~50代の文化リテラシーの高い方を新たなターゲットとして取り込み、興行として収益性を確保する。
  2. 施設の認知度を向上し、ブランド力を高める。
  3. 他の自社施設との間で顧客情報を共有し、新しいターゲットの取り込み、既存顧客へのサービス充実などを実施する。所謂CIS、CRM。

一方で、新たな創造、普及の観点から以下2点も課題と考えています。

  1. 古典芸能に関わる方たち、特に若手が今後も生活できるだけの仕事の場を作る。
  2. 若い世代の認知度向上。

この2点については、採算、収益性とは別の次元で考える必要があるのですが、メインの興行で採算が取れていなければこういった活動もできないので、バランスが難しいと考えています。

歌舞伎は「スーパー歌舞伎」など、斬新な取り組みで興行として成功していますね?

はい。歌舞伎は民間企業である松竹さんが興行を行っており、時代に合わせて大胆に変化しているイメージです。また、「歌舞伎とはこうである」という捉え方にある程度幅がある事も一因かもしれません。

私が担当している古典芸能は伝統を継承していくことを大事にしているため目指すものは違うと感じています。

これからの挑戦

壮大な挑戦ですが、目先で取り組もうとされていることはありますか?

まずは施設の認知度とブランドについて調査を実施したいと思います。何となく「知られていないのでは?」と考えていますが、しっかりとデータで確認して次のアクションを検討したいです。

また、建物の改装のために一定期間休館となる時期があるため、その間何をするのか、経営の観点から検討が必要です。

伝統芸能と密接な現場だと変化に対する抵抗も多そうですが、経営の視点を持ち込んでみて、職場の反応はどうですか?

やはり一定の抵抗があります(笑)

備品の保管場所や鍵の扱いを変えただけで、「そんなやり方は今までしていない!」と反発にあったり(笑) これは組織文化なのかもしれません。そういう事例ありましたよね?変革できないA社、みたいな。

企業内診断士としての自分の役割は、コミュニケーションを密にして少しづつ経営の視点を皆に共有していくことだと考えています。外部環境はどうなのか、内部資源はどうか、一つづつ診断士試験の過程で学んだ事を実践で試していきながら、職場に浸透させていきたいと思います。

芸術があることで少し幸せになったり豊かな気持ちになったりします。そのことのお手伝いをする仕事なのですが、それをうまくやる手段として診断士の学びで得たことが役に立つと思っています。

gunさんとインタビュアーのぼっち

いかがでしたでしょうか。

伝統芸能の世界に経営の視点を持ち込み大胆な変革に挑戦するgunさん。この記事を読んで「古典芸能ってどんなのだろう?ちょっと面白いかも。」と気になった方は是非週末に舞台に足を運んでみてください。

そこにはきっと、奮闘するおさかなの会のメンバーの姿がある事でしょう。

それではまた次回。